会報『かぬち』

会報『かぬち』13号(2009年4月17日発行)

【 CONTENTS 】

   (1)「建築家カタログ」発刊に向けて
   (2)文化講演会(10周年企画展~建築の力~)
   (3)建築展の意義(10周年企画展)
   (4)J+A(ジュア)活動報告書
   (5)第12回卒業設計作品選奨

 

(社)日本建築家協会沖縄支部建築展 「建築家カタログ」発刊に向けて
JIA沖縄支部長   慶佐次 操

三月末、うりずんの香り始める頃、皆様におかれましては益々ご健勝の事とお喜びを申し上げ、日頃のご理解、協力には感謝を申し上げます。お陰をもちましてJIA沖縄支部も今年で13年目を迎えます。その間、地域に根ざした支部活動と、会員個々の設計活動を重ねる中で、一般の方々や、発注者の方々へ「建築」の楽しさ、素晴らしさのアピールに努め、沖縄建築文化の発展に微力ながら寄与しているところです。
ところで、平成19年の改正建築基準法の施行、平成20年の改正建築士法の施行、そして今年に続く省エネ改正法、住宅瑕疵担保履行法などにより、普通に建築していた状況が、これまでと比べ非常に厳しくなりました。そして、建築に対する夢も描きづらいことから、建築個々や町並みへの画一化を招き、沖縄らしい景観が失われてゆくのではと危惧されるものです。そこで、これまでの沖縄における建築の独自性を保ちつつ、今後の建築文化の発展とひいでは景観形成への一役となれる様、建築設計に課せられた責任を考えれば、昨今の状況下でもJIA会員各々が気力、体力ともに充実を図り、建築の素晴らしさを広くアピールしてゆきたいと考えるものです。
そこで今回「~風土・住む・建築~」と題して下記の内容で「建築展」を企画致しました。
今回の「建築カタログ」発刊はそのプログラムの一環となりますが、皆様に建築の楽しさ、素晴らしさが少しでも伝われば、あるいは、マイホーム計画の参考にでもなり得れば幸いかと思われます、どうぞ一読ください・・・・。

※「建築カタログ(OKINAWA ARCHITECT 17)」は『建物紹介』でご覧頂けます


文化講演会(10周年企画展~建築の力~)

no13-kouenkai.jpg2008年度建築文化事業として2009年3月28日に沖縄県浦添市のてだこホール市民交流室にて建築文化講演会を行いました。今回は講師として建築家 内藤 廣氏(東京大学大学院教授)をお招きし「建築の力」の演題で講演して頂きました。
当日は生憎の雨と、隣接する施設で開催されていました「沖展」の影響で駐車場の不足が心配されましたが、会場にはJIA会員及び賛助会員そして講演に先立って行われた「第12回卒業設計作品選奨」の受賞者及び多くの学生、一般市民等総勢250名の参加がありました。
慶佐次 操支部長による主催者挨拶では、「建築文化事業を通して建築の素晴らしさ、楽しさを感じて取ってほしい」と延べ、共催者を代表して浦添市の儀間光男市長の挨拶がありました。
「これからの建築は、作品主義ではいけない」という言葉から始まり、内藤氏のこれまでの仕事を通して、建築家の役割と可能性、「建築の力」について語られ、最後に3つの言葉で講演を終えました。

♢ 人々が建築をつくる 建築が人々を変える
♢ 建築を媒介にして 人々と街を変える
♢ あらゆる建築は建築家の為の作品ではない 全ての建築は人々と街の為にある。

建築展の意義

沖縄支部が創立し今年で13年目を迎えますが、10周年記念事業として位置づけられた今回の建築展には下記の様な意義があったものと考えます。

※ 沖縄という県内屈指の文化イベントの開催時期や会場に合わせた事で、多くの方々の目に触れる事になり、支部活動にあまり接点が無い一般市民の方々をはじめ、学生や建築の関係者にもJIAの存在を大いにアピールできたものと思います。

※ 昨秋から始まった準備段階で、会員に新しい街づくりの提案を募集した事で、建築家として関わりのある街づくりへの関心を高める事になったと共に、これから次々と生まれる基地跡地のあり方を考える良い機会になったものと考えます。また、建築展で提案したユニークな案や大胆な案が、これからの実際の街づくりのヒントになっていく事を期待したいと思います。

※ 支部内に以前から要望としてあった建築家カタログが、建築展の開催に合わせて初めて発行されましたが、今後も様々な場で活用され、支部及び所属会員のPRに貢献するものと思います。

※ 毎年単独で開催している卒業設計作品選奨も、建築展と同時開催としたことで工業高校、専門・専修学校、大学にとって例年以上のインパクトがあるものになり、来年度からの作品募集に大きく寄与できるのではないかと思います。

※ 建築文化講演では、建築家:内藤廣氏をお迎えし、"建築の力"という演題の偶然にも街づくりを中心にした先生のお話は、建築展のテーマに相通ずる内容も多く、展示会と講演会の両方を見聞きした聴衆の方々には、建築や街づくりに大いに参考になったものと思われ、沖縄のこれからの建築文化の向上が期待できる貴重な講演会となりました。

※ 最後に、平成19年度の改正建築基準法に続き、改正建築士法の施行、それに続く住宅瑕疵担保履行法の施行等、建築業務環境に厳しさが増す中、今後の建築文化の発展に寄与すると共に、建築の素晴らしさを広くアピールし明るい未来へ向けてJIA会員自らを鼓舞し、建築界が元気を取り戻す良い機会になったのではないかと思います。

J+A(ジュア)活動報告 執筆者:前畠浩人・比嘉智邦

「手がのこる 手にのこる 漆喰塗り体験」

no13-ja.jpg今年、J+A(ジュア)の活動は8年目を迎えます。昨年は4月下旬の2日間、恩納村にある「ちゅらさ工房」の壁面漆喰塗り体験を催しました。「ちゅらさ工房」は自然環境にやさしい暮らしを実践しながら教えている家主さんの石鹸工房でもあり、交流の場でもあります。今回は古くなった外壁の補修を兼ねて学べることが多いと思い企画しました。
材料は生の漆喰に現地の赤土と砂と水を加えてミキサーで混ぜ合わせて作り、それを各人のパレットにのせて自分の持ち場を塗っていきます。 「この壁面を仕上げるんだ!」という意気込みから始まって、塗り進めながら、「隣の壁面とどうつなげようか?」という風に考えていきます。皆素人なので塗り方は一様ではないのですが、様々な手の跡を感じる壁面がひとつにつながればよいと思いました。ティータイムをとりながら、また近所の小学生の飛び入り参加もあったりしながら作業は進みました。
昼食は、カマドで薪を焚いて水を沸騰させ、家主さんが作った手打ちそばを各人が湯がいて頂きました。手作りならではの満足感がありました。 食後の座談会では和やかな雑談から、家主さんの自然環境と共にある生き方をうけての意見が飛び交いました。
昼休みの後は、家主さんの希望で植林をしました。若者たちがこぞって「クワディーサー」苗木を持ち歩いていく光景が微笑ましく映りました。 壁面塗りは、漆喰を塗るのに手いっぱい感はありましたが、ところどころ貝ガラやレンガ片で飾り付けたり、模様を描いたり、コテ絵に挑戦したりして楽しみました。
一年近くたった今でも塗った当時の新鮮な色が残っています。「塗り重ねを行って分厚くなると断熱にもなるし、外壁がうねうねと変化していく様が楽しそう?」という想いが湧き、「手がのこる、手にのこる、漆喰塗り体験」をまたやれたらいいなと思いました。
またその他にも、J+Aの活動に対し御協力頂けますJIAの皆様に感謝すると共に、今後もご指導の程、宜しく御願い致します。