『住まいの備忘録』第1回 〜自宅から学ぶ〜

発注者と設計者の立場

(社)日本建築家協会 沖縄支部長 慶佐次 操(有)名工企画設計


今回、沖縄建設新聞の計らいにより、「すまい備忘録」と題し、私ども日本建築家協会沖縄支部の会員数名がリレー掲載をさせて頂きます。日頃の設計業務を通した体験から、毎回各自の視点で違うテーマをご紹介し、楽しいシリーズにしてゆこうと思いますので、どうぞ皆様ご一読頂き、暫しのおつき合いをよろしくお願いします。
 さて、私は自邸について当時を振り返りながら述べてみたいと思います。自邸は既に筑後23年になりますが、若干30歳にして当然自ら設計しました。先ず敷地が2項道路に接するため、道路境界線の後退に依り4坪程の敷地面積減少を余儀なくされました。その時ばかりは発注者として建築基準法に対し強い不満を覚え、かつ周辺の方々の同意取付にもかなり心労を費やしました。それで2項道路に接する敷地に建築する家主の心労が十分理解出来ます・・・。
 次に設計趣旨として、中庭・吹抜を中心としたコートハウス平面、4m道路斜線で通風・採光を可能とする豊かな断面構成、威圧感を和らげアールを描く立面、屋根スラブに土を載せて緑化+断熱効果云々と、ノンクーラー住宅を目指し意気込んで設計しました。
しかし当時はコスト管理能力に乏しく、工事費が収まらず3度も設計をやり直し、竣工に至るまで丸4年を要しました。
 その間に結婚・出産と次々と家族も増えるのですが、入居後間もなく嫁から、猛暑に耐えられずクーラーが必要だ、子供が危ないから手摺りにネットを張って、台風対策に雨戸をつけて・・・等々、容赦ない批評と改善を求められ、私はその釈明とその対応にとても頭を悩ましました(雨戸以外はすべて改善を行い承諾)。
 家族の成長と共に23年の経年から、外壁、サッシ廻り、設備など全体的にオーバーホールを要する時期に差し掛かった様です。自邸故、自ら描いた住まいの長所・短所を設計者の立場で色々発見し、一方では今後建物の修繕管理費の捻出と、建築借入金の返済という発注者の立場、この両方の立場を同時に体験し得ていることは、私が設計活動をさせて頂くにおいて大いに役立っている様です・・・。