『住まいの備忘録』第2回 〜実験住宅を通して〜

自邸で思いのままに

金城 傑((有)K・でざいん)


消費税3%から5%に上がる頃、このたてもの(自邸)は計画された。  日頃、施主とのせめぎ合いの中で、こちらが提案した事が十分に実現している訳ではないので、いつか思いのままに造って見たいと思っていた。
 そして、自邸でそのチャンスが訪れたのである。
 もう一人の施主である妻にもほとんど相談もせず、自分が試したみたかった工法や仕様等をここぞとばかりに実験的に採用した(何しろ、設計者が同一人物の施主に提案するわけだから、提案は次々と受け入れられていった)。
 建物の高さを押さえるため、床・壁・天井は最上階(3階建て)の天井を除いて、コルクタイル・漆喰・吹付の直張り工法とし、屋根は太陽光発電(結局、予算が合わず断念)の名残とコンクリート輻射熱軽減の目的で、コンクリートスラブと鉄骨屋根(冷却用散水装置付き)の混構造。
 室内壁の漆喰(完成当初の藁の香りは、何とも言えない程心地よかった)や、木炭シート(畳の中及びその下敷き使用)に調湿作用を期待した。その為か、しばらく室内で飼った愛犬は和室を好んでいた。その愛犬の為に、後日小屋に水洗トイレを設置した。
 結果的に愛犬自身が便器(特別仕様とした)の水を流す技を披露し、TV取材を受けるまで至らなかったが、今でも糞の処理や小屋掃除には大いに役立っている。  完成から、13年経った。西日対策として設置した西側外壁のワイヤーメッシュに絡む生育途中のカエンカズラやハーブによる遮熱がまだ十分ではないが、実験住宅の様に建てられたこの住宅は、今でもこの住宅は、今でも概ね家族に好意的に受け入れられている。
 小中学生だった子供達も一人、二人と巣立っていったが、あえて鍵を設けなかった(おまけにドアに覗き窓が付いている)部屋に誰も文句を言わなかったのは、正直なところ意外だった。
 そろそろ、外壁や木製パネル等のメンテナンスの時期が来ているが、直感だけでまとめたこの建物の自己採点はまあまあで配偶者からは、幸運にも及第点を貰っている。