『住まいの備忘録』第4回 〜混構造住宅〜

コンクリートの中に木造の家を造る

(社)日本建築家協会 沖縄支部副支部長 島田 潤((有)デザインネットワーク)


「首里の立体町屋」とサブタイトルのついた2世帯住宅の設計はMさんに奥さんからの電話で始まりました。私共の設計した住宅を雑誌で御覧になり、記事を読まれての依頼でした。
 光や風の取り入れ方、緑を積極的に利用する考え方など共感する部分も多く、特に自然素材や木造に対するこだわりには強いものがありました。そこで、私が長年温めていた、コンクリートの構造体の中に木造の住宅を挿入するという手法を取り入れた、混構造の住宅を造ることを提案しました。木造の良さは可変性にあります。住み手のライフスタイルや家族構成の変化に合わせて改造がしやすいことです。梁を掛けて床を造ることも出来れば、間仕切りを作ったりと自由に間取りを変化させることができます。丈夫なコンクリートの中にそれを造れば時代の変化に追従する長寿命な住宅となるでしょう。
 とはいえ木土とは違い木造に不慣れな大工さんが多い沖縄で、柱や梁の継ぎ手、仕口を加工すること、十分に乾燥した木材を仕入れる事、木材問屋に杉やヒノキ、松などの木材の在庫が少なく、節や木目を確認しながら材料を選別する事が出来ないなど、沖縄の木材事情に直面して苦慮しなければいけないことが色々とありました。取り寄せた30ミリ厚の杉の床材の節を選別して張り分けるために一日に二度も現場に足を運びました。それでも、試行錯誤しながらコンクリートの中に木の香りのする暖かい木造空間が完成しました。
スギ材の床も足触りが良く裸足で歩くのに気持ちの良いものです。もう一つ我々が提案した事は、南側の近接した隣家に配慮して木製のデッキを緑(植栽)のカーテンで囲うことでした。プライバシーを保ちながら涼しげで花や緑を眺めながら暮らせたらと思い植物がつたう為のワイヤーメッシュを取り付けました。
 竣工から2年ほど経って訪問するとそこには清々しい蔦の絡まった緑のカーテンが完成していました。