会報『かぬち』

会報『かぬち』12号(2008年4月18日発行)

【 CONTENTS 】

   (1)JIA沖縄支部会員建築作品
   (2)J+A(ジュア)活動報告書
   (3)第11回卒業設計作品選奨

 

 

2007年度 J+A活動報告
<あたりまえ>は意外と、驚きに満ちている 普久原 朝充

no12-jender.jpg今年度のJ+Aでは、講演会と勉強会の2件を催しました。
 講演会では、Five Dimension の大嶺亮さんをお招きして"Style Less -STYLE-"という題での講演をいただきました。  大嶺さんの学生時代から振り返り、現在の状況に到るまでの経緯や、設計の流れ、 そして、型にとらわれる事無くどん欲に建築に臨もうとする考え方などを伺うことができ貴重な体験をさせていただきました。 質疑応答も活発に進み、そのまま夜の打ち上げでも皆大いに盛り上がったのでした。

 もう一つは、社会学講座の第二弾として、社会学者の桃原一彦さんを招いて 『<ジェンダー>で読み解く現代社会』というタイトルの勉強会を行いました。  女性に対して「男まさり」といったり、男性に対して「女々しい」というような印象を受けるときの わたしたちの前提となっているのは何か?と問うのが社会的・文化的性差としての「ジェンダー」に対する問いです。  時代の変遷をふまえた桃原さんの解説を受けて、各人のジェンダー観について話し合い、自分の固定観念に戸惑いながらも、 理解を深めることができたように思います。

   「型にとらわれない」「ジェンダーって何?」という、この二つの会から共通に学んだのは、 わたしたちが普段、自明<あたりまえ>としていることをもう一度考え直してみようとする態度だったように思います。  異なる社会、異なる時代、異なる形式を知ること、または思い描くことで、わたしたちの持っている<あたりまえ>が、 実は多様な可能性の内のひとつであり、外部に対しても開かれていることを気づかせてくれるのです。

総評 審査委員長 福田 俊次

卒業設計作品選奨も今年で11回目になり、大学、専門・専修学校、工業高校の間でも、 一つの学生生活の区切りイベントとして認知されてきたとみえ、合計37点もの多くの作品の応募がありました。 大変ありがとうございました。

 ただ工業高校部門では6点の応募しかなく、毎年元気な部門であっただけに、少し心配しております。  作品のテーマを決め、自分の考え方をまとめ、模型や図面で形にし、皆の前に発表する事は非常に意義ある事だと思います。 もう一人の自分との対話であったり、教師との対話であったり、先輩との対話であったり、人それぞれの過程を経て、一つの形にしていく。 何もないゼロから、確実に3次元の形が創られていく。物創りは楽しいし、すばらしい。 でも、物が創られる事で、周りの環境に何らかの影響を与える。良くてあたりまえ。悪いとずっと批判の対象になります。

   今回の作品の中ででも「環境に優しい」や「自然を感じるいやしの」、「弱者に優しいバリアフリーな」等をテーマにした、 人間が主人公の作品が多く見られました。 社会と建築を真正面から真面目にとらえようとする姿勢が感じられ、安心感と同時に期待感がもてました。
   それに、今回は特別審査員として東京から船木さんと、細矢さんが加わって頂き、審査の密度の濃いものにして頂きました。 ありがとうございました。